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うたかたの日々と夢うつつ

濡れた草の中の 青い小さな花 それはあなた それはあなた それはあなた

エリザベート ~ゾフィーの言い分~

 帝国でただ一人の男と言われたゾフィーです。私も必死でした。夫亡き後、まだ若いフランツの後見として、オーストリア帝国を守らなくてはいけませんでした。

 息子フランツとシシィとの結婚には、反対でした。でも、皆さんが思っているほど最初から険悪だったわけではありません。フランツは23歳。シシィはまだ16歳でした。若い二人ですもの。突然恋に落ちたのでしょう。花嫁修業完璧の長女の方ではありませんでしたけど、どちらにしろ私の姪には変わりありません。結婚式の頃には、まあどちらでも変わりないと思っていました。大体、田舎の花嫁修業なんてタカが知れています。皇后としての立ち振る舞いや、宮殿での作法などはどうせ一から教えなくてはいけません。それだったら、若くて変な癖のついてないシシィの方が躾け易いんじゃないかとも思いました。礼儀作法なんてどうにでもなります。ただ、世継ぎを産んでくれればよいのです。私は、そう簡単に考えていました。

 ただ、シシィは思ったよりずっと強情でした。それでも、フランツは当初、私に味方をしてくれました。それが私には唯一の救いだったのです。外交のほうでは、シシィも役に立っているようでした。私は、疎まれても夫婦が仲良くやってくれ、オーストリア、しいてはハプスブルク家が安泰ならそれでいいと思っていました。

 それなのに、徐々にフランツの態度が変わってきたのです。あの子には、懇々と言い聞かせてきました。時に、冷酷に冷静に執務を執り行うこと。皇帝たるもの優しいだけでは、帝国の統制はとせません。フランツにはもともと優しさというか、甘さがありました。だからこそ余計に厳しくしたつもりです。シシィにも懇々と説明したのですけど、シシィは所詮、余所者。ハプスブルクの重みなどわかるはずがありません。フランツの甘さにシシィは付け込んだのでしょう。フランツが子供の教育をシシィに任せてほしい。といいに来たのです。フランツとシシィの長男、ルドルフは生まれたときから皇太子という立場にいました。ただの子供ではないのです。教育の専門家が何人も付き、普通の子供とは違う教育を受けるのです。将来、立派な皇帝となるために。シシィは完全に間違えています。いうことを聞くフランツもフランツです。私は、頭がくらくらしました。

 教育係の手を離れたルドルフがどうやって過ごしたか私は知りません。でも、フランツからシシィが出っていったと聞きました。いったい彼女は何をしたかったのでしょう。そして、今度はフランツが私を責めます。シシィが出ていったのは、私のせいだというのです。

 私は、フランツに厳しすぎたのかもしれません。でも、フランツの幸せを願わない日は一日もありませんでした。ハプスブルクの幸せを願うことは、フランツの幸せを願うことだと思っていました。違ったのでしょうか。なにか悪い予感がします。私は、本当に信じていました。疑ったことすらありませんでした。ハプスブルクの幸せがフランツの幸せにつながっているのだと。でも、もう私には過ちをただす力も時間もないのです。